雨の庭、ドビュッシーの「版画」より

人生回り道をしている元受験生、現医学生が、思うことをつらつらと。

濡れ落ち葉

今年の冬の訪れは普段より早いらしい。

北陸の紅葉も、いつ見ようかと思っているうちにあらかた散ってしまった。


濡れ落ち葉を踏みしめて、あの妙に落ち着くような匂いを吸い込むと、あの思い出す情景がある。


幼き日、祖母に手を引かれて歩いた帰り道。柔らかな落ち葉を踏みしめて歩いた。

澄み渡る晴れの日、家に帰れば、自分の背丈ほどもあった熊手で子供なりに庭の欅の落ち葉を掃いた。


長雨の晩秋。確か、十六の年の。

いつになっても持ち主の来ないの机と椅子を眺めつつ、虚ろな目をして歩いた帰り道の濡れ落ち葉。


街路樹の落ち葉。

人生で最も御し難い怒りと悲しみと、その反面の感情を抱いた家族が、ある日突然、こころの奈落に落ちた日。カサカサと乾いた音を立てて吹かれていた落ち葉に、にわか雨が降り、行き場を失った日。


濡れ落ち葉は、どうしてなのか、そんな記憶の断片ばかり、思い返させてくれる。

祖母は年老い、机の持ち主は、消息知らず、家族はまだ‥。